eラーニングの効果測定とは?評価設計の基本
前回の記事では、学習目標の考え方について整理しました。
関連記事:▶eラーニング設計における学習目標とは?成果につなげるための考え方
学習目標は「受講後にどのような行動ができるようになるか」を定義するものですが、その目標が達成されたかどうかを判断するためには、当然「評価設計」が必要になります。
しかし実際の現場では、コンテンツ作成が優先され、評価の概念が一部、またはゴッソリ全部抜けていることが少なくありません。その結果、
「コースの知識理解度は測れているが、実際に業務で活かされているかなんて、測定方法がわからない」
・・・と、知識理解度を超える評価測定は難しいと悩まれている方が多いのではないでしょうか。
この記事では、eラーニングにおける評価設計の基本と、実務でどのように考えるべきかを整理します。
評価設計とは何か
評価設計とは、学習目標が達成されたかどうかを判断するための仕組みを設計することです。
ここで重要なのは、評価は単なるテスト、つまり「クイズ」だけではないという点です。
評価は、受講者がどの程度コース内容を理解したかだけでなく、実際に業務で活用できる状態になっているか、つまり行動変容が起きているかを確認するものです。
そのため、本来の評価設計は学習目標とセットで考える必要があります。
なぜ評価設計が重要なのか
評価設計が重要なのは、学習の成果を可視化するためだけではありません。評価設計が曖昧なままだと、コンテンツの方向性そのものがブレてしまうためです。
例えば、
- 何をもって「できるようになった」とするのかが不明確
- クイズで合格スコアでクリアしても実務で使えない
- 受講後の成果が説明できない
といった問題が起きやすくなります。
つまり、評価できない学習目標は、設計として成立していないとも言えます。
よくある評価設計の失敗
① クイズだけで終わってしまう
多くのeラーニングでは、理解度チェックとしてクイズが使われます。
知識の習得は土台になるものですから、もちろん重要な手法で評価に不可欠です。
しかしあくまで「知識の理解」を測るもので、実際の業務で使えるかどうかまでは測れません。
② クイズ問題が単純過ぎる、または少なすぎて学習目標との評価が一致していない
コンテンツを作り終わった後に、「とりあえずクイズを付ける」というケースによく発生する問題です。
学習内容の理解を測るための問題設計が不十分な場合、クイズが簡単過ぎたり、問題数が少ないと、内容理解を測定する精度が落ちてしまい、学習目標と評価が一致せず、評価自体が形だけのものになりがちです。
③ クイズとアンケートで終わってしまう
クイズで理解度を測った後、別途アンケートを実施する場合もあります。これは受講者の満足度を測るために有効な評価方法です。
コースの内容そのものに対するわかりやすさや、現場で使えそうか等の重要な情報を得ることができます。この情報はコース内容の更新に有益な情報となるでしょう。
しかしながら、学んだことに対して、受講者が感じた学習直後での「感覚」に頼る部分がありますので、実際の業務における行動を測定することはできません。
④ 業務における行動変容が評価できていない
本来、研修の目的は行動変容にありますが、その部分を評価できていない状態が圧倒的に多いです。
その結果、「受講したが成果が出ない」という状態につながります。
eラーニングでは業務における行動変容の評価をどう定義するかが非常に重要となります。
評価の考え方(基本的な枠組み)
評価は、複数のレベルで捉えることができます。この考え方は、「カークパトリックモデル」として広く知られています。
第一段階:反応(満足度)
アンケート
→受講者の満足度や印象
第二段階:理解(知識)
クイズ
→内容を理解しているかを確認
第三段階:行動
実務での実践状況
上司評価
→学んだ内容が現場で使われているか
第四段階:成果
KPI
業務指標
→ビジネスへの影響
このように整理すると、クイズやアンケートだけでは評価として不十分であることが分かります。
現場での現実と限界
とはいえ、実務ではすべてのレベルを測定することは簡単ではありません。
実際には、
- クイズ(理解)
- アンケート(満足度)
までの取得がほとんど、という現実があります。その理由として、第三段階以降の「行動」や「成果」の測定には、
- 現場との連携
- データ取得の仕組み
- 継続的な運用
が必要になるため、ハードルが高くなるのです。
それでも評価設計が必要な理由
実際、第三段階(行動)や第四段階(成果)の評価は現場や他部門との定期的な連携が必須となるため、多くの企業では第一段階(満足度)や第二段階(知識)までしか評価されていないのが現実です。しかし、この状態には大きな問題があります。
それは、「測れる範囲」でしか設計されなくなることです。
例えば、知識テストで評価できる内容だけに学習目標が寄ってしまい、結果として「理解はできたが、実務では使えない」、「現場で使う機会が少ないため、時間の経過とともに学んだことが断片的な記憶としか残らない」などという状態を生みやすくなります。
では、なぜ測定が難しいにも関わらず、第三段階以降の評価を意識する必要があるのでしょうか。
それは、評価を意識せずに設計されたeラーニングは、「受講しただけで終わるコンテンツ」になりやすいためです。
逆に、たとえ実際に測定できなかったとしても、
- どのような行動ができるようになるべきか
- どのような成果につながるべきか
を設計段階で定義しておくことで、
- 学習目標が具体化される
- コンテンツの設計方針が明確になる
- 行動につながる学習体験を設計できる
といった効果が生まれます。
重要なのは、すべてを完璧に測定することではなく、「どこまでを評価対象とするか」を設計段階で意識しておくことです。
eラーニング設計でどう活かすか
eラーニングは知識習得が中心であり、行動変容までは難しいと考えられることも多いですが、設計次第では行動につながる学習体験を作ることも可能です。
例えば、
- 行動を評価したい → ロールプレイが必要
- 判断力を評価したい → ケーススタディ問題が必要
- 手順を評価したい → 操作演習が必要
といったように、評価方法によってコンテンツの設計も変わります。
この視点を持つことで、「とりあえず教材を作る→評価が曖昧」という状態から抜け出し、行動変容、その先の業務成果につながる設計が可能になります。
まとめ
評価設計は、eラーニング設計において重要な要素のひとつです。
- 評価は学習目標とセットで設計する
- 行動変容を意識する
この2点を押さえることで、より効果的な学習設計につながります。
「理解度は測れているが、成果につながっているか分からない」
そんな状態に心当たりがある場合は、設計の段階から見直す必要があるかもしれません。
もし、
- 自社のeラーニングがうまく機能していない
- LMSを導入したが活用できていない
- 教材を見直したいがどこから手をつけるべきか分からない
と感じている場合は、まずは現状を整理することをおすすめします。
また、より具体的に自社の課題整理や改善の方向性を明確にしたい場合は、設計伴走サービスで個別に整理することも可能です。
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